Concert & Event


schedule 2011


11月12日
篠のひびき〜大野利可横笛演奏会
 ゲスト 中村鶴城

■2011年11月12日(金)午後7時開演(6時30分開場)
■東京都/新宿/新宿文化センター小ホール
■演目:《いにしへの》《川越舟歌追想》《ひふみよいむな》《行》ほか
■出演:大野利可(篠笛) 中村鶴城(琵琶)
■チケット:前売3,000円、当日3,500円
■チケット申し込み:office遠の音:TEL 042-534-9160  FAX042-535-7854 大野利可:TEL&FAX 049-234-7621
■主催:大野利可
■コメント;中村鶴城は《ひふみよいむな》と《行》の二曲で共演いたします。

5月29日
中村鶴城 琵琶リサイタル2011
「光の語り」十周年記念コンサート

■2011年5月29日(日)午後2時開演
■東京都/トッパンホール
■演目:《まほろばの白き鳥〜ヤマトタケル幻想》/《空海》より上段「嵐の海へ」/《アッシジの聖フランチェスコ》より初段「スポレトの啓示」、五段「ラ・ヴェルナの聖痕」以上すべて抜粋版
■チケット:前売:4.000円 当日:4,500円
■チケット発売日:3月14日
■チケット申し込み:ピパルス工房03-3380-5130 トッパンホールチケットセンター 03-5840-2222
■企画・制作・主催:ピパルス工房
■コメント:
進軍ラッパは鳴り止まず
 悲劇語りに偏ってきた琵琶語りの世界に「光の語り」を提唱したのが2001年。早くも十年が過ぎた。その間、創作した曲は十三曲あまり。曲といっても四年前に始めた「琵琶伝」はひとつが一時間半から二時間の長編。その語りものを創るための資料の収集、研究、作詞、作曲、練習……その一方で演奏活動や弟子への教授の仕事も平行し、また教則本、詩集の出版なども行ってきた。我ながら「鶴城、あっぱれ! 」と褒めずにはおられない。
 私のどこにそんな情熱があるのか? いや情熱というより胸底より熱くこみ上げてくるマグマのようなもの。頭ではなく肚から湧いてくるもの。岡本太郎ではないが「光の語り」は爆発だ! 
 しかしながら、めざす道は天長く消えかすむ万里の道程。その道を無我夢中、休みもせず急ぎ足で歩んできたせいか、ちょっと息切れがする。ここはひと休み必要だよ……身体がそっと囁いている。インスピレーションそのものであるマグマの湧出もやや沈静の趣にある。
 そんな訳で今回のリサイタルは、創作は止めてこれまでの作品再演の次第と相なった。
 しかし、来し方を回想するつもりは毛頭ない。過去に根拠すれば化石になる。ひたすら未来を見つめ夢をたぐり寄せねばならぬ。もっとも、いたずらに未来を夢見ても陽炎のごとく目眩するばかり。今という一瞬にこそ未来が詰まっている。そう、今しかない。今、何をしたいのか、今どうしたいのか。今やらねばいつやる。お前がやらねば誰がやる。ああ、進軍ラッパが我をせき立てる。

 「今よ今こそ。進め! 進め!」 
 「隊長、何処へ進めばよいのでありますか?」
 「お前には聞こえぬのか、あの歌が。 とにかく前進じゃ。よいか、余計なものを見るな。余計なことを考えるな。目を閉じて心の耳を澄ませよ」
 鶴城、休む間もなく徒《かち》はだし。剣にかわる琵琶とバチ。 銃後の旗に送られて瞼に浮かぶふるさとよ。
 おお、聞こえてきた、聞こえてきたぞ。不思議な歌声が……。

  われ美の泉をこそ尋ねゆかん
  美の泉に触るれば心歓ぶ
  美の泉に口すゝげば心潤う
  美の泉に沐浴すれば心洗わる
  美の泉は永遠《とわ》の生命《いのち》の泉なり
  われ美の泉をこそ尋ね求めん
  霊《く》しき泉よいづこなる 
  永遠の生命の泉得むまで 
  われ尋ねゆかん
  どこまでも 
  どこまでも

 *  *  *  *
 ねぇねぇ、鶴城さん。大丈夫? 
 やっぱり、ちょっとお休みなさいな…… 

■メッセージ
東日本大震災。それは夢破る天の大喝でありました。罹災された方々は、今なお大変な思いで辛苦の毎日を過ごされておられます。また日本中の人々が、先行きの見えない明日に不安と憂いを抱いております。
 天はいま大試煉を与えているのだと思います。それはすべての日本人に与えられた試煉であります。越えなければならない何かがあるからこそ与えられた試煉。どんなに大変でも、それに真向かい、共に手を取り合って、それぞれの立場の中で役割を果たしながら、一歩一歩進んでゆくしかありません。単なる復興ではなく、進化創造的未来のために。より高い霊性を獲得せんがために。
 しかしながら、このような時にいったい音楽は何をなしうるのでしょうか。これは私たち演奏家に突きつけられた試煉であります。音楽は直接的にものを生み出したり、肉体を養うことはできません。しかし、心を養うことはできます。音楽は心の栄養です。心の糧です。ひとは心の糧なしには生きていけない。その糧となるような無為無心の音楽をなすことこそ演奏家の使命であり、芸術の尊い役割でありましょう。私は今回のチラシにこう記しました。
 「われ美の泉をこそ尋ねゆかん/美の泉に触るれば心歓ぶ/美の泉に口すゝげば心潤う/美の泉に沐浴すれば心洗わる/美の泉は永遠《とわ》の生命《いのち》の泉なり/われ美の泉をこそ尋ね求めん……」
 芸術とは美を求める万里の道程。芸術家はその旅人です。ならば、いま歩まねば、いつ歩むのか? 
 この艱難の時、私は「光の語り」をもって、ささやかながら美のともしびを掲げたいと願うのであります。「光の語り」を宣言して十年、まさにこれからが働きどきと心得たのであります。日本よ永遠なれ!