1972年、宮城県登米(とめ)郡登米(とよま)町の生まれ.
東京都立大卒業後、環境コンサルタント業に携わるが、写真家の道を目指す。
撮影スタジオでWORKS主宰者の松田加代子と出会い、いまではWORKSのイベントでは欠かせないカメラマンに。
旅を愛し、海外・国内問わず、心に残るさまざまな一瞬をカメラに収める。見慣れた風景も彼に撮られると、あたかもヨーロッパの田園風景のような深遠さが加わるのだから不思議だ。

上松尚之HP
http://www.h7.dion.ne.jp/~u-foto/

旅するということ

『・・・光景を見て、空気を吸って、音を聞いて、街そのものに触れてくるのが目的だった旅。今思えば旅先で写真を撮るのは大きな、しかし多くの目的の一つに過ぎなかった・・・』
『・・・日本に戻ってしばらくの間は、旅と写真はまったく別のものでありつづけたが、2001年用のカレンダーを作って配ったことが転機となり、そのために撮った写真、写真を撮るために行った旅、旅の記録として撮った写真というように、自分にとっての旅と写真の位置付けは、混ざり合いながら変化しつづけてきた。そして今回の展示にあたって、この5年間を振り返る機会として写真を多くの人に見てもらいながら、自分にとっての旅をする意味、写真を撮る意味を考えてみた・・・』

『・・・こうしてみると写真を撮ることは対象となるものを追う旅と言い換えても良い行為だと思えるし、旅するということは対象をつぶさに観察して自分の中に取り込もうとする撮影と同じようなことに思えてくるのだ・・・』

上松尚之 2004年10月
── 水溜りは次第に深くなる。これ以上先へは長靴無しでは進めなくなったので、立ち止まってカメラを構えた。するとほどなく二人の住人が現れて言葉を交わす。シャッターを一枚だけ切って雑踏へと戻った。──
サン・マルコ、ヴェネツィア
── 船でしか訪れることのできない対岸へ渡り散歩する。運河沿いの道を進むとサンマルコ地区を望むことができる。絵葉書のような一枚も良いものだ。──
ジュデッカ、ヴェネツィア
── プロペラ機に乗ってみた。大きなプロペラが頼もしくもあり、不安でもある。乗ってみれば、低空を飛ぶため大きく見える下界に、すっかり虜になる。──
徳島空港、徳島
── 雨の日は客も少ないのだろう。舟溜りにはゴンドラが集まり、静かに休んでいるように見えた。きれいに並んだその姿とレリーフが目を引いた。──
サン・マルコ、ヴェネツィア
── 馬の銅像はこの通りの名にちなんだものだ。それをシルエットにして背後のビルの白い壁に切りぬいてみた。──
馬車道、横浜
── どこか遠い田舎の風景のようだ。でも場所を聞いたら人は驚くかもしれない。そうして、まだまだ東京近郊も捨てたものではないと気付く。──
江戸川、流山