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Discography

After The Morning / Cara Dillon

27/February/2006

After The Morning 01. Never In A Million Years *
02. I Wish You Well *
03. Here's A Health *
04. Brockagh Braes *
05. Garden Valley **
06. October Winds *
07. Bold Jamie *
08. The Streets Of Derry *
09. This Time **
10. The Snows They Melt The Soonest *
11. Walls ***
12. Grace *
* written by Cara Dillon and Sam Lakeman
** written by Cara Dillon, Sam Lakeman and Marne
* Trad. arranged by Cara Dillon and Sam Lakeman
** written by Dougie MacLean
*** written by Pamela Rose, Mary Ann Kennedy and Randy Sharp
Label : Rough Trade, Number : RTRADCD198
Recorded and produced by Sam Lakeman
解説
今回もオリジナル曲が半分、そして伝承曲・カバー曲が半分という
内容ですが、本作では前作以上に選曲が充実しており、また各曲の
アレンジもよく練られています。特に曲の中盤から後半にかけての
工夫が光る曲が多く、ただ単にサビのパートを繰り返すのではなく、
楽器のソロやコーラスがほどよく付加されています。

楽器・ボーカル共に、ストレートなサウンドで収録されているのも
今回の特徴で、音質の面ではかなりクリアになった印象があります。
ライブ録音に極めて近く、曲から受ける印象もその分深くなりました。

曲順も具合良く並べられており、ちょっとポップな曲から始まって
印象的なメロディを持つ伝承曲、しっとり静かなバラードと続き、
中間部の本作のハイライトとなるパートへと導かれていきます。
そして最後は子守唄を思わせる可愛らしい小品で閉じられます。

各曲の出来映え、またアルバムとしての完成度の高さから考えても、
極めてお薦め度の高い一枚と思います。
補足
当初2005年秋に発表が予定されていましたが、レコード会社の意向で
2006年春へと発表が延期された第三作目のアルバムです。
延期の理由は2005年の秋以降、特に11月には「A Woman's Heart」の
U.S. ツアーへの20日間の参加が決まっており、秋頃にアルバム発表を
した場合には充分なプロモーションができないため、条件が揃うベストの
時期を考慮しての事だったようです。
「皆さんには少しお待たせしてしまいますが、それに見合うだけの作品が
  できたと思います。」

発表延期の際にカーラは上のようにコメントしましたが、実際に本作品の
内容は「プロモーションに充分な期間を用意したい」というレコード会社の
意向も理解できる、充実したものでした。
前作から二年、その間にカーラとサムが新たに影響を受けた音楽的要素、
そして二人の周囲で起きた様々な出来事をも反映したアルバムです。

収録曲は前作と同様に、カーラとサムの二人で書いたオリジナルが半分、
アイルランド周辺の伝承曲やカバー曲が半分ですが、アルバムを通して
違和感なく楽しめる、そんなアレンジが光る作品ではないでしょうか。
ちなみに発売延期が決定された後、新たに二曲が追加されたそうです。
それらがどの曲かは不明ですが、英国でシングルのカップリングとして
収録される場合もあるとの事です。
各曲の解説・訳詞
※ 以下、「」内はラジオ・インタビュー等でのカーラのコメントです。

01. Never In A Million Years

オープニングを飾るのは第一段シングルにも選ばれたこの曲。
サビのコーラスが耳に心地よい、爽快なポップ・ナンバーだ。
切ない乙女心を描いたラブ・ソングになっている。
「今まで書いた中では最もポップな曲だと言えます。」

02. I Wish You Well

続くこの曲も、ラジオ・オンエアーで早くから評判になっていた軽快な曲。
同じラブ・ソングでも、一曲目とは違って少しブルージーな曲調。
バンジョー・ソングの別名があるそうで、最近ブルーグラス系の音楽にも
演奏の楽しみと作曲への興味を持ち始めた事がうかがえる。
「このアルバムでは今までと違った音楽形態を取り入れた曲もあって、
  そういった曲が紹介できる事をすごく楽しみにしながら作りました。
  特にこの曲などではブルーグラスがベースとなっていますね。」


03. Here's A Health

(訳詞)
チーフタンズなども演奏している事で知られている伝承曲。
"Here's a Health to the Company" という歌詞の意味は、「仲間達の
健康を祝して」といった乾杯の時の音頭。移民船の中、親しい友人達や
乗り合わせた人々との別れを惜しみ酒を酌みかわす。アイルランドから
移民していく人々の希望と悲しみを描いた伝承曲。
「伝承曲については、ほんとうに沢山の曲を聴いて育ってきましたし、
  私の故郷ではもう生活の一部になっています。
  そんな訳で、とてつもない数の伝承曲のレパートリーがありますし、
  アルバム用にしょっちゅう録音もしています。そこで問題になるのが
  どの曲を今度のアルバムに入れるか、どの曲を次までとっておくか
  毎回悩んでしまう事です。すごい事ですけどね。(笑)」


04. Brockagh Braes

愛する人を残して故郷アイルランドを後にした、この歌の主人公ジョン。
再び会える事を信じ、誓いを交わし合った二人を待っていた運命とは?
この曲は伝承曲を独自にアレンジしたものだが、この曲のように美しい
メロディを持つバラードが本作でも随所に登場する。

05. Garden Valley

ダギー・マクリーン(Dougie MacLean) というスコットランドを代表する
シンガーのアルバム、「Real Estate」(1988年)に収録されている曲が
オリジナルで、本作では独自のアレンジで演奏している。
この曲のみカーラの姉、メアリーがバック・ボーカルで参加。
( "the wildlife album" でもダギーの作品を一曲カバーしている。)

06. October Winds

翌年に初来日を控えていた事もあって当サイトではお伝えしなかったが、
2003年の10月、カーラは最愛の父を亡くしている。
当時セカンド・アルバム発表直後の長期ツアーに出ており、父上の
様態悪化という突然の知らせに急遽帰郷、葬儀のために数ヶ所での
公演こそ延期としたが、気丈にもすぐにツアーを続ける決心をした。
この曲はその頃に一気に書き上げられ、彼女の父に捧げられたものだ。
「音楽という表現の方法には、悲しみをも昇華させてしまうような、
  そんな大きな治癒効果があると思います。」


07. Bold Jamie

(訳詞)
前年のコンサート・ツアーでも披露していたオリジナル曲。ギター中心の
軽快な伴奏に、哀愁漂う歌のメロディーがうまく乗せられた佳曲。
海外では本作におけるベスト・トラックとの声も高い。

08. The Streets Of Derry

カーラ自身が本作のハイライトというこの伝承曲では、アイルランドを
代表する男性歌手ポール・ブレディとのデュエットを実現させている。
なにしろ相手は大歌手、参加のお願いもかなり躊躇したということだが、
カーラとサム、二人の自宅での録音にも快く出向いてくれたという。
ちなみに本作のタイトルである「アフター・ザ・モーニング」は、この曲の
歌詞から命名されている。
「デュエットでの録音は初めてなのですが、ポール・ブレディ氏に
  快く応じてもらえたので光栄に思っています。」


09. This Time

この曲もすでに前年のコンサート・ツアーでも披露しており、聴衆からの
好反応を得ての収録となったオリジナル曲。

10. The Snows They Melt The Soonest

カラン・ケイシー、アン・ブリッグスなど多くの著名女性シンガーも
歌っている事で知られる、伝承曲の中でも指折りの名曲。
カーラの歌唱とサムのピアノ伴奏の完璧な調和という、彼女ら本来の
持ち味が存分に生かされるタイプの曲であるが、今回はさらに一歩
進んだアレンジに挑戦している。オーケストラの起用だ。
録音とミックスにも通常より時間をかけており、それも本作発表延期に
少なからず影響したということだ。
オーケストラのアレンジはフランク・ギャラハーが担当。
「霜が降り、心さえ凍てつくような冬の情景の美を表現できるなら・・
  敢えて困難な方法を選んだんです。プラハに飛び、ルドルフィヌムの
  プラハ・シティ・フィルハーモニー管弦楽団と共に録音しました。」


11. Walls

オリジナルはパメラ・ローズ(Pamela Rose)というサンフランシスコを
拠点に活動している女性シンガーの曲で、ソロ・デビュー・アルバム
「Morpheus」(2002年)に収録の作品。
やはりこの曲も独自のアレンジでカバーされている。

12. Grace

この曲にもブルーグラス系音楽へのアプローチが見られる。
一年前からギターを弾き始めたという、サムによって作曲された曲で、
ギターはまだピアノほどの腕前がなく、子守唄っぽい曲になったと
いう事だが、とても可愛らしいラブ・ソングに仕上がっている。
マーティン・シンプソンがギターで参加。

「私達の音楽的なルーツはこれだ、とか、今私達がやっている音楽の
  ジャンルはこれだ、というような人から貼られたレッテルには拘らず、
  広くリスナーに受け入れてもらえるような創意工夫、でもフォークから
  かけ離れてしまう事のない手法でアルバムを作れたら・・・
  そういう状況が理想かな、と思って取り組んでいます。」