2003年 10月 永遠の別れ
10月2日 グルメっぷりは変わらず
....なのだが、やはり9月ごろから体力の低下が著しい。散歩に行きたがらないし、家では寝てばかり。一歩一歩の歩みに力がない。たまにふらつくことがある。もう、いよいよなのだろう。先生も「そろそろ厳しい状態なのに、ぎりぎりで頑張っている。」とのお言葉。ルナの生きようとする力には感動するが、燃え尽きる日も近いだろう。
神様、私が無駄に浪費しているこの命を、いくらでもルナにあげるから、頼むからルナを元気にしてください。
10月8日 高熱
朝から何も食べない。食欲がないときの特効薬、鶏ササミ肉や牛赤身肉にも興味を示さない。嗜好性の高いおやつやスープ状の食べ物など、何度も買い出しにいっては試したけれど、効果はなかった。
39.8度の高熱がでて顔全体がむくんでいる。かかりつけの先生に来て頂いて、リンゲルや気管を拡げる薬などを注射。夜に少しレバーを食べる。
10月9日 生と死を考える
朝、少しだけササミを食べた。そのまま病院へ。暖かい陽気だったので公園で少し日なたぼっこ。病院にカレンちゃん&ママさんが来てくれて、ササミとさつまいもをプレゼントしてもらった。ルナはそれらが入った袋に顔を突っ込んだ。!!食欲がでてきたのか?試してみると、物凄い勢いでササミを平らげた。さつまいもも一気に口に運ぶ。焦り過ぎて、咽を詰まらせて吐きだした。吐いたものを今度は慎重に食べている。バカだなぁ。
血液検査、レントゲン、最近の身体の状態、どれも芳しくない。主治医の先生からは「もはや癌の進行を押さえる術は無く、肺炎を併発する可能性がある」と言われた。また "生きる" ことの質の話しもされた。前々から意識していたことだが、どの時点で死なせてあげるかを真剣に考えなければならない。
10月10日 またも高熱
39.6度の高熱。食欲も皆無。先生に来て頂いて前回と同様の処置。まだ本当に厳しい状態ではないが、今後、熱が下がらず、常に舌を出して苦しそうな呼吸をしはじめたら、いよいよ駄目だとのこと。酷くなると今度は横になることができなくなるらしい。肺が苦しくて呼吸ができないそうだ。
もう、あと数日であろう。
10月12日 ちょっとだけ外出
昨日、今日と熱がでていないので、家の周りを10分程散歩。こんな時に外に出すなんてと非難する人もいるだろうが、もういいのだ。太陽の明かりを最後に見せてやるのだ。砂肝やレバーを積極的に食べた。
10月13日 今度は右前足
39.6度の発熱。食欲なし。先生に診てもらって数時間後に熱は下がり、牛の赤身を食べる。しかし、右前足が謎の腫れ。先日の後ろ足と違って、ウンチを踏んだりしていない。免疫力が極端に低いのだろう。
10月15日 右足は変わらず
もはや、40度近い発熱はあたりまえになった。先生に来てもらって同様の処置。何も食べず、水は飲んでいる。明日は大学病院の予約が入っているが、抗癌剤の効果は期待できないのだから、高熱がでているようでは行っても無駄と判断。ルナは車が苦手だし、もう残り僅かなのにツライ思いをさせるのは可哀想なので、今後、大学病院には行かないことに決めた。
10月16日 ゲンキンなヤツ
熱はなく元気で食欲もある。夜にサルーキのフーカとコーギーのアクアが来てくれた。フーカママから砂肝とレバーのプレゼントを頂く。ルナは貰う前から、かばんに頭を突っ込んで催促。は、恥ずかしい。たいした躾をしていないのがバレてしまうじゃないか。フーちゃんが家に上がって屋内を探索。カワイイなぁ。
10月17日 肺が苦しい
ついに40度を超える発熱。呼吸が速い。が、舌を出して口で息をするほどではない。先生に来てもらったが、いつまでたっても熱は下がらなかった。下半身が力弱くなり、横になる時や立ち上がる時に苦労している。ほとんど食べず、水は飲んでいる。
10月18日 ケーキも食べられず
熱は下がらない。先生曰く「昨日よりは呼吸がラクなようだ」とのこと。下半身の不自由さは徐々に酷くなってきて、横になった際に下側になった後ろ足を、うまく横に延ばすことができない。常に私の助けを必要とするようになった。なにも食べず、水をかろうじて飲んでいる。
夜にフーちゃんとアクちゃんが来てくれた。ルナは一生懸命起き上がって歓迎。フーママより砂肝とケーキを頂いた。ケーキをその場で食べさせてみるが口には入れてみるものの、すぐに吐きだしてしまった。細かくして強引に飲み込ませる(薬を飲ませる時のように)。嫌なのか、力なく横になってしまった。熱は下がらず、水を飲むだけ。横になっていると肺が苦しいのか、鼻や咽が鳴ったり、声をだして深呼吸するようになる。顎下や胸のリンパ節が大きくなり、咽から胸の下の方まで赤くなっている。胸の下(?ろっ骨に囲まれた最下部)がぷっくりと腫れている。
夜には自分で寝返りを打てなくなり、私が寝ずの看病をする。ルナに何度もキスをする。悲しみはますばかりだ。
10月19日 苦しそう
熱は下がらず、水を飲むだけ。呼吸はずっと苦しそう。強引に流動食のようなものを注射器で流すが、あまりにも効率が悪い。定期的に寝返りを打たせる。それでも苦しがって立ち上がろうとするが自力では立てない。助けを得て立ち上がるがフラフラしていまにも倒れそうだ。
深夜3時直前に南荻窪の救急往診受付に電話で相談するが、特に楽にしてあげられる体勢はないようだ。エアーマットを勧められたがそんなものはない。4時をまわったあたりから、痛みか苦しみか、立ち上がりたいのか、悲鳴を上げてもがくようになった。立たせてみても前脚は突っ張り、後ろ足は力なく膝から落ちる。ヨロヨロと歩く姿は壊れたロボットのよう。
今すぐにでも楽にしてあげたい気持ちでいっぱいになった。
10月20日 永遠の別れ 1
朝、楽にしてあげたいと先生に電話。9時、先生にルナの姿を見せる。腫れや赤くなっている箇所、立ち上がらせる際の様子....こんなに苦しんでるんですと訴える。聴診器をあてる。鼓動はまだ力強いらしい。若いだけに心臓が頑張れてしまうそうだ。しかし、全身状態は最悪で苦しむ姿はあまりにも哀れだ。
相方と決意を固め先生にお願いする。つらすぎる決断で迷いがないわけではないが、自分の手で死なせてあげることはできないのだし、責任を自分が負う姿勢を先生に見せねばならない。必死に迷いを隠してきっぱりと伝える。
おやすみルナ、楽になれるよ。幸せをありがとう。ありがとう、ルナ。
・・・。
最期はあっけなく逝った。先生と今後を相談。つらいが相方の仕事のことも考慮し、今日中に葬儀をすることにして先生を見送る。ドアを閉めるや、ルナに何度も呼びかけ泣いた。撫でてキスをし頬擦りをした。
10月20日 永遠の別れ 2
葬儀は事務的にすすんだ。花を手向け、ひっぱりっこする綱と、妹が折ってくれた千羽鶴を添えた。最後のお別れ。ルナに触れられる最後の時だ。悔しくて、あまり触ってあげられなかった。焼かれている間、他愛のない話をした。かなり長時間で身のない話しでは埋めきることができなかった。そして骨と灰になったルナと対面。立派な骨だった。もっともっと走らせてあげたかった。
骨壷は大きく重かったが、自宅まで直線距離で4キロの道を3人で歩く。最期の散歩だ。途中さすがに重くなって、半分ほどすすんだところでタクシーに乗ってしまった。家に着くと再び悲しみに包まれた。ルナにお水を供えてから新宿へ出発。「ルナ、留守番お願いね」。新宿では疲労で頭がまわらない。ふたりとも丸2日寝ていないのだ。帰りの電車内でまた泣いてしまった。
10月20日 永遠の別れ 3
駅について自宅に向かう。もういないことはわかってるのに、ルナが待っているからと急ぎ足。昨日までの日常だ。
マンション入り口の郵便受けを気にしつつも、早く帰ってあげたいのでドアへ急ぐ。いつもと同じ日常だ。
ドアを開ける。そっと開ける。自然とサークルに視線がいく。「ただいま」と言いながらルナの様子をみるようにサークルに視線がいく。しかし、ルナはいなかった。
靴を脱ぐ。玄関先はルナのトイレだからシーツが敷いてあるのが日常。でも、シーツはなかった。
骨になったルナにただいまと手をあてる。昨日まで当たり前に存在した日常と、非日常(今日からの日常)が混ざってしまっている。家が家でないようだ。妙な空間に入り込んでしまったかのよう。疲労と睡魔で19時前に睡眠。レアルマドリーとセルタの試合も、おかしな頭ではよくわからない。
23時30分にトイレに起きる。トイレに行き際に玄関先にあるはずのトイレシーツをチェック。しかし、それが昨日までの日常だと気づかされる。
ふたたび床に入るが、いよいよ眠れない。悲しくて寂しくて悔しくて、泣いて泣いて泣いて泣いて泣いて。webに寄せられたみなさんからのコメントを読むが、まだとても返信できない。
意味なくヤフーのニュースを見る。勉強中のblogを見る。リニューアルしきれなかったこのサイトの今後を考える。少し眠気を感じて床に入る。しかし、感情が込み上げ泣きだしてしまう。ずっとこれを繰り返しあまり眠れなかった。明日は朝からお礼の挨拶にまわるというのに。
10月21日 動いていないとツライ
午前中から、ご近所でお世話になった方々や病院などに、報告とお礼の挨拶にまわった。
ペペのお店でカレーをご馳走になって、パトラのお宅へ。行く前に電話をする。ドアフォンを鳴らすとサスケママさんが迎えてくれた。「あれ?ルナちゃんは?」「実はきのう....」これだけでお互い泣いてしまって、どうしようもなかった。忘れていたけれど、パトラとルナは親戚なのだった。パトラのお父さんはルナのお爺ちゃんなのだ。家には旦那様もいらっしゃって色々話ができた。とても穏やかな時間を過ごせて、ずっと張りつめていた心がほっとできた。パトラもいっぱい触らせてくれた。ひざにコトリと顔を落としてくれたときには、なんだかルナに見えてしまって可愛くてたまらなかった。
旦那様は以前、コンビニ前でルナを(ルナとは知らずに)偶然見た事があるそうだ。そのときのルナはサルーキらしからぬ人懐っこさで、かなり甘えてきたらしい。そして、帰宅してすぐにサスケママさんに「珍しいサルーキがいた」と報告したそうだが、サスケママさんはルナを良く知っているため(ママさんはルナにあまり触れさせてもらえないことが多かったので)、まさかそれがルナだとは思わなかったそうだ。アイツ、実は男好きだったんだなぁ。ホント楽しい時間だった。ありがとうございました。
でも、やっぱり頭と心がどうかしてしまっている。普段は絶対にしないのに、電車への駆け込み乗車をしてしまった。しかも、それが反対方向である事に気づくのに、2-3駅かかってしまった。帰りの電車でも、最寄り駅には停車しない急行列車に乗ってしまった。どうかしてるのはわかっているけれど、うまく対処できなかった。