イベント情報
速報 EIJI LIVE 2004

NewYork Drycutの最初のライブは、1994年の「肯定」だった。当時のEIJIはJOHN SAHAG WORKSHOPのマネジメントまで任されており、すでにトップスタイリストだった。そのステージは彼の単独ライブで、カット技術の高さと彼一流のアジテーションで観客を圧倒した。美容のショーとしては前代未聞の内容だった。EIJIはその後独立してマジソンAv.の一等地にサロンを開き、カット料金3万円近くでフルブックというポジションに上りつめた。

10年の間、ほぼ毎年NewYork Drycutのライブやショーが行われてきたが、ここ数年はEIJIが指導してきた日本のスタイリストたちの成長が著しく、EIJI+日本スタイリストの形式が多くなっていた。EIJI LIVE 2004は久しぶりのEIJI単独ライブでもあった。チケットの予約は発売1週間で満杯になった。(文:古手本地薫 写真:上松尚之)

stage 1

満席になった会場のスクリーンに、今回のテーマ「独創」のコンセプトが流れる。そしてEIJIが登場。いきなりモデルの髪をカットし始める。両脇に大きなスクリーンがあり、カットするはさみや手の動きがよく分かる。ピースをつまでははさみで小刻みに切る。生き物のように飛び散る髪。EIJIは髪を凝視して髪を切っているが、体をかがめたり伸ばしたり、体全体で髪と闘っているような印象を受ける。
印象的な音楽が流れる中、黙々と切り始めて2時間。カットを終えたEIJIがやっと語り始めた。10年前に「俺を追いかけてこい」と観衆を煽ったころとは違った落ち着いた語り口。冗談なのか「すみません。もっとうまくなります」と語りかけた。モデルは会場を一周してカメラのフラッシュを浴びていた。

stage 2

休憩後、再びEIJIがステージに上がった。今度は日本のドライカット講師とモデルを従えて。
EIJIがカットした5名のモデルの髪をアレンジする。ストレートだった髪を巻き、それをさらに逆立てたり。ドライカットされた髪は日常の手入れが楽だ。EIJIの手が髪の毛を無造作に動かすだけで様々な表情のスタイルに変化していく。

「僕らのカットは皆さんが毎日の仕事でできなかったことを可能にするカットなんです」EIJIが語りかける。「ウエットとかドライは別にして、自分が描くスタイルを作りたい。みんなそう思うでしょ。でもできないこともある。それができるようになる」「20人切らなくても7人切ればいいんです。僕は1人切るのに2時間近くかける。客を満足させるスタイルを提供してそれに見合うお金をもらえばいいんですよ」
いつものEIJIトークが炸裂する。

「なんでこのカットをうまくなろうと一生懸命やってるんだろうって思うことがある。その答えは自分の理想するスタイルを作るためだって、最近分かってきたんです」

「10年前から教え始めた。いま日本で講師をしている人たちの仕事はかなりうまくなっています。最初はどうしようもないひとも10年やって追いついて来る」

話が進むとハプニングが起こった。突然EIJIが涙して絶句してしまった。初めて見た。10年の講習活動の中で育った講師たちの存在が、いまの自分を支えている。彼らに負けないように自分はニューヨークでさらに大きなステップを踏む。EIJIは赤いタオルを手に観衆に宣言した。
EIJIの中で何かが起こり始めている……予感させる時間だった。

stage3

最後はドリンクを手にしたフリースペースに。EIJIのカットモデルの髪をみる人、EIJIや日本の講師に質問する人、それぞれの時間を過ごした。

14-19時の長いショーが終わった。
勇気、元気、安堵、挑戦、300人を超えた観客は何かを持ち帰ったはずだ。