話題の映画「御法度」を見るための遠い遥かな道(その3)

 この劇場には、ずっと以前に来た記憶があります。なんだかコンサート・ホールみたいに、やたら音が響きます。だれかがジュースの缶でも蹴っ飛ばしたら、劇場中に響きわたります。むかしの映画は音がかなり悪かったので、このくらい残響のある方が風呂場で歌ってるみたいで良かったのかも知れないけど、いまやデジタル録音でちゃんと音を作ってあるので、ちょっと邪魔ですね。もっとデッドな方が良いです。

 くたくたで、映画がはじまったら寝てしまうんじゃないかと思ったけど、そこはやはりむかしからの習性、はじまったとたんに目も耳もシャキとしてしまう。映画「御法度」の内容については、長くなるのでリンクから「御法度」のWebサイトを御覧ください(手抜き)。このWebもうすぐ消えてしまうので、お早めに。

 製作会社のごたごたや大島監督の病気などで、何度も中断されて完成した事もあり、かつての大島映画を知るものには、やはりパワーダウンは認めざるおえない。しかし、最高のスタッフが集まり、丁寧な仕事をしていて、そこいらの映画には負けていません。ワダ・エミさんの衣装はぼくも着てみたい。坂本龍一さんの怪し気な音楽、いつもながらちょっとくどいけど、大島監督は音楽はすべてお任せで口を出さないそうだから、まあ、ぼくなら 2,3箇所「ここ、いりませんね」と言うかも。それに、音の効果もあるんでしょうが、立ち回りで刀を振り回すと、とても痛そうで良いですね。また、出てくる男たちの顔がほんとに良いのは大島監督ならでは、意外と言うか武田真治さんがとても良かった。このメンバーで「新撰組」のシリーズ化しても良いかも、まあ無理でしょうけど。なんか、いつまでも見ていたい気分でした。じゅうぶんに堪能して外に出ると、すでに最終回に入場するお客さんたちが列を作っておりました。

 それにしても、やはり、見たい映画を見るのにこんな苦労させられるのはどう考えてもおかしい。いくら良い商品を作っても、それがちゃんと欲しい人に届かないんじゃね。上映館、上映時間もあちらの都合で決めてるんじゃない? 映画会社は企業努力してないです。これじゃあ赤字になっても仕方ないです。

 などと考えながら帰路につきました。何年ぶりかで駆け足で通り過ぎた東京都心は、以前にくらべて、やはり活気がないですねえ。金曜日の夜なのに、人々の顔がすっかり冷えきってます。渋谷や新宿はまた違うのかも知れませんが・・・。まあ、このくらいの方が落ち着いてて良いのかな。もう少し年をとったら、東京の真ん中に小さなアパートでも借りて、毎日、映画見たり芝居見たり美術館行ったりして暮らしたいなあ、とか思ったりもしますが、きっとだめでしょう。というわけで、帰り道、緊張感が抜けて来たらドッと疲れが出たのでありました。

 なお「御法度」は一部劇場でまだ上映中です。Webサイトでお確かめください。

話題の映画「御法度」を見るための遠い遥かな道(その2)

 藤沢駅前のコンビニで調べてみると「御法度」を上映している劇場は、どうも横浜駅の向こうになってしまうらしい。そう、なぜか横浜駅周辺ではどこも上映してないのです。「マイカル松竹本牧」か「川崎チネチッタ」どちらも横浜から電車でしばらく行ったところ。さてどうする。

 考えるまでもなく電車に飛び乗り、大和まで引き返して相鉄線に乗り換え横浜へ、そして京急で川崎に向かいました。電車に揺られているうちに、だんだんあたりも薄暗くなって来ます。「川崎チネチッタ」は映画館やコンサート会場が一緒になっているところです。だが川崎駅からちょっと歩かなければなりません。駅を出て早歩きでひたすらチネチッタを目指す、数分で到着し、息を切らせながら見てみると・・・「おいおい」

 藤沢の映画館に比べたら少しは良心的ですかね、ここも二本立てで「御法度」の最終上映は午後二時だったようです。まあ、もう一本が「ファイト・クラブ」だから許してやるかぁ。

 もうあたりはだいぶ暗くなって来ました。どうする? もちろん!! また早歩きで川崎駅前に戻って、商店街の本屋さんに飛び込み・・・もう二本立てのところはだめでしょう。そうすると都心のロードショー館しかない。新宿、渋谷、そう、有楽町。「丸の内プラゼール」なら、今から行けば上映時間に間に合いそう。こんどは小走りでJR川崎駅へ、そして有楽町を目指しました。この時点でもう、すっかりくたびれて耳はキィーンとかいい出すしで、あーあっこれで映画見たら寝ちゃうんじゃない?

 ぼくはもともと東京の生まれなので、有楽町に着けば後はすぐに行けます。しかしここに来るのは、いったい何年ぶりなんだろう。マリオンのエレベーターで昇って劇場へ、今度はだいじょうぶ。おお、さすが都心だ、料金も1800円かぁ、それにしては名画座みたいなショボい券売機だなあ。すべり込んでみると、すでに上映ははじまっているものの、まだ予告編をやっているようです。真っ暗の場内に入って目を凝らして見ると・・・最終日の最後のひとつ前の上映でありながら、お客さんは結構入ってます。それも年輩の人から、若い人たちまで層が厚いようです。これだけ入ってるのにどうして今日が最終日なんでしょう。そんなに「釣りバカ日誌」見たい人がいる?

 暗い中でなんとか空いている席を見つけて崩れ落ちる。もうくたくた。これでやっとあの「御法度」を見ることが出来るんですねえ。

 おっと、また長くなってしまいました。ごめんなさい、もう一回つづきます。