ごくたま昨日日記 in November, 2002

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Nov.11,2002 (Mon)

daylife

 予想した通りと言えば予想した通りにblogなる幻想に魅入られた一部の方々が激しく槍玉に上がってますな。個人的にはあそこまで堂々と「blogは凄いぜ!」「俺たちはblogの草創期の担い手だぜ!」と言い切られちゃうと、自分がやっているようなWeb日記とblogの間には深くて流れの速い川があるんだなあ、と思わずにはいられません。つーか未だによくわかってないんだけどblogってなによ!?

 それはそれとして。今日は『暗いところで待ち合わせ』乙一を読んでいたわけだが、この小説には盲目の女性が出てくる。何の因果かシンクロニシティか、会社の先生が仕事中にいきなり網膜剥離になった。突然のことだったので手術をしてくれるという眼科まで先生に付き添うことになった。「網膜剥離でいきなり手術なんかしてくれるのか?」と思ったのだが、コレが意外なことにしてくれるのだ。先生に聞いたところまだ軽症の部類だったのでいきなり手術が可能だったそうだ。もう少し遅れていたら入院ということになっていたらしい。しかも手術時間は五分もかからなかったそうだ。そうなのか、網膜剥離。意外な真実。
 でも手術代はじゅうきゅうまんえん。保険を使えば6万くらいにはなるらしい。5分の手術で19万円か。でも目が見えなくなることを考えたら安いもんだよな。

 この眼科が表参道だったので、そこらで昼食をと思い、このオシャレな街から逃げるように路地にあったうどん屋「傳の栞(でんのしおり)」に入る。私は掻揚げを頼んだ。関西風うどんなので薄味。手打ちって書いてあったけどあんまり腰はなかった。しかしそれを補って有り余るほどに掻揚げがデカイ。しかも二つ。掻揚げだけで腹一杯になりました。うどん屋とは思えないほどオサレな空間でBGMはジャズでした(それもどうかと思うけど)。でも居心地自体はよかったです。私たち以外の客は女性だけだったし。うどん屋でもやっぱり表参道なのね。

 そんなわけで今日は仕事を殆どしないで終わってしまいました。給料出るんだろうな。

 んでもって地元に帰って来てからMとTと一緒に飯。その後はえれー久し振りのビリヤード。ビリヤードがこんなに笑えるスポーツだとは思わなかった。的球を落とすどころか、的球に当てることすら目的になってないビリヤードってなんなんだよ。笑い過ぎたおかげでいい腹ごなしになりました。

 私ゃアニメは殆ど見ません、見ませんが…どなたか先日の『おジャ魔女どれみ』を見せさてはくれませぬか?。原田知世が声優で出演となれば見ないわけには。いや、なんかすげえいい話だって噂だし。くぅ、なんか屈辱ッカー。

 こんなことばかり書いてる場合じゃないのに書きたいことがまとまらない。

涅槃の読書模様

 『暗いところで待ち合わせ』乙一読了。レビューは後日。ただ一言、「参った」。
 
 続いて『地の果てから来た怪物』マレー・ラインスター読み中。

Nov.12,2002 (Tue)

daylife

 明け方眠りながらうつらうつらと2時間程考えていたことを起きたらキレイさっぱり忘れていた。それ自体はよくあることなのだが、さすがに寝ながらとはいえ熟考を重ね、書き残しておこうと思っていたことだけにカケラすら思い出せないのはショック。言葉の切れ端くらい思い出せよ >自分。

 昨日(今朝)考えたってことはおそらく昨日周辺の話題に関連する事柄だと思うんだけどなあ。思い当たるのはblogOHPマンガの物語性乙一を読んで考えた、辺りなんだけど…ダメだ、やっぱり思い出せん。なんか悔しいなあ。

 今日は、婚姻届を無事に出してきた新婚カップルと食事しながら結婚式の打ち合わせ。「この証人では認められません」とか言われて突き返されなくてよかったよかった。

 地元のレストランが知らず知らずのうちに様変わりしていた。こうしてみると狂牛病の与えた影響というのは大きかったんだなあ。ステーキハウスは軒並みなくなってました。その割に焼肉屋は生き残っている気がする。不思議。

涅槃の読書模様

 『地の果てから来た怪物』マレー・ラインスター読了。レビューは後日。未だにbk1で購入できないのはなぜ。

 BOOKOFF詣で。

Nov.13,2002 (Wed)

daylife

 購読しているメルマガ「今日の雑学」(サイトはここ)から届いたメールで4im.netの開設を知る。私もまだ覗いてみた程度ですが、これはなかなか面白そうです。なにより暇潰しにはもってこいな気がする。こういうのは確かにブレインストーミングになりますな。一見わかりにくそうですが、皆さんもちょっと遊んでみてはいかがでしょうか。

 ここのところずっと気になっていて、遂にいてもたってもいられなくなり、夜中にマンガの摩天楼をディープ・インパクト状態にして、やっとこさ全巻を発掘。そのまま読み耽る。
 え?、なにをって?。『星の瞳のシルエット』柊あおいですよ(*1)
 で、そのまま全10巻と番外編の『ENGAGE』2巻を読んでたら2時過ぎになってしまう。というわけで今日は眠いです。
 まあ、読んだからといって別にここに書くような内容もないわけでなんですが、とりあえずスッキリした。全編読み返すのは10年振りとかだと思うんで、意外に細かい部分を忘れてたし(おケイの存在は完全に失念していた)。いやー、やっぱ250万人乙女のバイブルでしたね。今の中高生が読んだらどう思うのか切実に知りたいです。

 オチはありません。ちなみに私は香澄派ではなく沙希派です(*2)

 なんだか書こうと思っていることはたくさんあるんだけど、その一つ一つをまとめることがうまくできず結局こんなことを書いて終わってしまう。書かないとドンドン溜まっていって更に個別にまとめることが難しくなるんだろうけどなあ。淘汰するに任せて残ったものだけ書けばいいのか。それはあまりにも即時性から離れた行為だ。

 しかしまあ、このページを訪れてくれる方々がなにを求めて訪れているのかも不明だから、いちいち書く内容について忖度しても始まらないか。
 といいつつ人の目を気にしてしまう真実と、ちっとは自己満足できるような文章を書きたい事実。

涅槃の読書模様

 『動機』横山秀夫【→bk1へ】読了。超オススメ。レビューは後日。

 今年の私的ランキングでは『亡国のイージス』福井晴敏がトップで決まりと思っていたのだが、ここ最近で、『イリーガル・エイリアン』ロバート・J・ソウヤー『暗いところで待ち合わせ』乙一『動機』横山秀夫と傑作が目白押し。年末は頭を悩ませることになりそうだ。

『暗いところで待ち合わせ』乙一

 弱冠17歳にしてデビュー。その後も順調に作品を発表し、「切なさの達人」という代名詞までいただいた乙一の作品。その評判の高さゆえに天邪鬼な私は手を出していませんでした。本作は幻冬舎文庫から2002年4月に発刊されてますが、なぜかbk1では買えません。

 事故により光を失い、盲目となってしまったミチル。父親も失い、たった一人、誰もいない家の中で、ただ寝転がるだけの生活。
 「このまま誰ももかかわりを待たないまま、ひっそりと生きていこう」
 しかし、その彼女の家に一人の侵入者が入り込む。彼の名はアキヒロ。警察に追われ、逃げ場のない彼は、ミチルの目が見えないことを知り、部屋の片隅で息を潜めじっと過ごしていた。
 こうして二人の奇妙な同居生活は始まった。

 「小説」を読んだ。それが全ての感想だ。いや、小説なら毎日のように読んでいるではないか。だがしかし、それでもこの作品を読んで一番に感じるのは「小説」を読んだ、という思いだ。あまり好きではない言葉だが「文学」を読んだ、と言い換えることもできるのかもしれない。とにかく、これこそが「小説」だ、という強い思いでいっぱいだ。

 ここで「小説」論や「文学」論を引き回すのは筋違いなので、それは避けるが、間違いなく乙一という作家は想像力を文字にするという力を持つウィザードだ。(まったくの主観で恐縮だが)作風や内容は異なるが、この読み心地は私に安部公房を思い出させた。「私小説」でもない「リアル」でもない(*3)、まさしく「小説」。それが「文学」のような高尚な文体、小難しい言葉を抜きに成立しているのだから、もう言うことはない。本来、「小説」とはストーリーだとか、キャラクターだとか、設定だとか、そういった個別の部位を云々して評価されるべきものなのか、それは間違っているのか、私にはわからない。ただ、この小説を前にして、それらを云々することは私には不毛だ。とにかく読んでいる間中、「小説」を読んでいる、という満足感で満ち満ちていた。それが全てだ。

 それでも無理矢理に言葉を引き出すとすれば、この小説の起承転結の「結」ともいえる部分はなくてもよかったのでは?、ということくらいだろうか。確かにそれがなくなると収まりが悪くなり、カタルシスも得られないかもしれない。しかし、私個人は例えそれがなくても評価は全く変わらないし、むしろその方が「文学」に近づいたのではないかと思う。もちろん、「文学」に近づく必要性はまったくといっていいほどないのだが。ただ、カタルシス自体は第三章のラストのミチルのセリフだけでも充分すぎるほど得られたし、あのセリフで終わったら、これ以上ないほどに美しいラストのような気もする、というだけだ。しかし、そんなことは重箱の隅の米粒よりも小さい些細なことだ。

 本当に久しぶりに「小説」を読んだ、という気にさせてもらった。この、ワクワク、とも、ドキドキ、とも異なる充足感を与えてくれたということだけでも感謝したい。ホント、凄いよ乙一


*1: この時点でもう一人の自分が激しくツッコミ
*2: 激しくどーでもいい&激しくツッコミ
*3: 乙一が自分の体験を取り入れて作品を書いていることは疑いようがないが、単なる経験の引用で終わっていない

Nov.14,2002 (Thu)

daylife

 新文化のニューストピックを読んでいると各出版社がポイントサービスについての見解を発表し始めた模様。予想通り「遺憾」というか「イカン」(*1)という発表ばかりですな。「出版が不況だ」、「本が売れない」と言い、周りに対してあれも駄目これも駄目。で、自分達はどんな努力してるんだ?。文句言うだけならバカでもできると思うんだが。ポイントサービスに関する当該ページはここ
 Amazonのマーケットプレイスについてはまだどの出版社、取次ぎも、書店も見解を発表していない様子。見て見ぬフリ?。

 物忘れの激しさに呆然Part2。昨日の日記を記述した後、サイト巡りをしていて、どこかのサイトの話題に「明日言及しよう」と思ったはいいがその話題も、どこのサイトかもキレイさっぱり忘れている。情けなくて父ちゃん涙が出てくらあ。

テキストサイト依存度チェックですが、テキストサイト自体は殆ど読まないので、ミステリ系サイトと置き換えてやってみました。以下結果。

 shakaさんのテキストサイト依存度は100ニッキ中で66ニッキ でした。
あなたには中程度のネット依存症の傾向が見られます。今はテキストサイトが面白くて仕方ないといった状態か、もしくは随分のめりこんだけど最近では少し飽きたのか、大分落ち着いて来たといった状態の方です。今は2〜3日ネットが無くても生きて行かれますが、外出時にサイトの事が気になるようになると、悪い兆候です。

 『Witch Hunter ROBIN』のDVDを買おうかどうかしようか迷っている今日この頃。レンタルできれば一番いいんだけどなあ。


*1: 駄洒落でスミマセン

Nov.15,2002 (Fri)

daylife

 イカン。本当に物忘れが激しい。今日もまた思いついたことをキレイさっぱりと忘れてもうた。

 ひとつ考えていることがあるんですが、結構大変な作業になりそうだなあ。もう少し考えて、外にも振ることを考えてみよう。とはいえWebの時の流れは早いからなあ。

 えー、今日から試験的にマンガに関してもトピック立てしてレビューしてみることにしました。いつまで続くやら。少年マンガとかはたった一巻の単行本だとなかなか書くこともないんだけど。

 そんなわけで少女マンガばかり読んでいる気がする今日この頃。

涅槃の読書模様

 『祈りの海』グレッグ・イーガン読み中。

 購入物。

『魔法遣いに大切なこと 1st』山田典枝/よしづきくみち(DRAGON COMICS)【→bk1へ】[comic]

 これが一巻なんですが既にアニメ化が決定しているそうです。原作者も作画者もこれが初めての単行本とのこと。

 菊池ユメは高校を卒業して岩手県の遠野からはるばる東京へやってきた。それは彼女が一人前の魔法遣いになるため。この世界では魔法労務規定法に基づいて社会に奉仕する公務員なのだ。ユメは研修指導員の小山田の元で見習い魔法遣いとして働き始めた。

 4話が収録されています。どこかで聞いたような設定とどこかで聞いたようなストーリー(*1)。しかしそれが決して否定的な意味でなく、どこか懐かしさを感じさせます。「ほんわか」の中にも魔法遣いとしてのほろ苦い試練が織り込まれ、天然で頑張りやさんのユメを思わず応援したい気になってしまいます。

 目新しいところはなくともこうしたマンガは普遍的に生まれてくるもので、読者としても久し振りにこうしたハートフルな雰囲気に浸りたくなるものです。しばらくはユメの成長を見守るとしましょう。

 ユメの顔が時折、某萌マンガのキャラにソックリに見えるのは私だけだろうか…。

『地の果てから来た怪物』マレー・ラインスター【→bk1へ】

 1970年に出版され、長らく絶版となっていたが、創元SF文庫の復刊フェアでこの度復刊された。

 南極に一番近い補給基地である絶海の孤島ガウ島。20名弱のメンバーだけのこの島に久々に明るい話題がやってきた。南極を調査していた8名の調査員が補給のために訪れることになったのだ。
 しかし、島に向かう飛行機と交信中、機内で突然の悲鳴があがり、その後意味不明な叫び声と銃声が聞こえた時点で更新が途絶えてしまう。やっとのことで飛行機は着陸したが、直後にパイロットは自殺。そして、乗っていたはずの7人の姿も消えていた。いったい、飛行機の中でなにが起こったのか?。
 そして遂に島でも最初の被害者が。彼らを狙う怪物は正体は?。

 ハリウッドB級SFホラーの小説版。それ以上でも以下でもなし。その意味では非常に楽しめました。未知の生物による殺戮、主人公とヒロインの恋愛話、まったくB級で、特筆すべきことはなにもありません。実際、コレが映画化されてないのが意外だと思ってしまうほどです。

 そのB級臭さを更に高めるのが主人公の行政官(この訳は古すぎないか?)ドレイク。一見厳格で島の行政官として信頼に足る人物のようで、自らもそうあるべきと自負しているのですが、実際は恋敵に対して簡単に逆ギレするわ、職権を濫用して秘書を誑しこむわ。両思いだから救われますが、片思いだったら完全にセクハラですし、恋敵がちょっとイっちゃってるから許されますが、現実には恋敵の方が理に叶った行動を取っている場合もあります。しかし、作者は(おそらく)主人公をまじめな行政官として描こうとしているので、そのギャップが笑えます(*2)

 肝心の謎の怪物の正体は、ある程度早い時点で「こいつだろうな」という見当はつくと思います。早い人なら50ページも読めば「ははあん」とくるでしょう。SF作家らしく、その正体には一応納得いくような説明もあって「なるほど」とは思いますが、細かい部分ではツッコミ満載でその点でもやはりB級という枠は越えてません。

 なかなか面白いのが、恐怖のどん底に落ちた島からの通信を聞いた本国(アメリカ)がとことん、「島で集団錯乱が起こった」という姿勢を貫くことです。それが最後のオチ(オチなのか?)にも絡んできて、本来笑うところじゃないのかもしれませんが、映像を想像すると笑うしかありません。パイロットが自殺した理由も含めて。

 ホラーとしての難をつくなら殺される人数が少なすぎるといったところでしょうか。これではあまり恐怖感が盛り上がりません。死ぬ人も印象薄い人物なので思い入れも湧かないし。作者はきっといい人なのでしょう。

 とにかく全編B級の嵐。私は決して嫌いではないですが、この作品を復刊させた東京創元社の思惑は今ひとつ図りきれないところです。


*1: 誰が読んだって『魔女の宅急便』を思い出すっしょ
*2: その読み方が正しいのかどうかはわかりません

Nov.16,2002 (Sat)

daylife

 本日はグリーンホール相模大野でスーパー・エキセントリック・シアター『幕末幻妖伝』を観てきました。感想は↓。笑い過ぎで死ぬかと思いました。

 その後は町田に出て晩御飯。つばめグリルって名前は知ってたけど初めて入ったよ。ハンバーグならぬハンブルグも美味しかったし、カキも美味しかった。生まれて初めてカキの殻を自分で開けました。なかなか楽しい経験だった。初心者には厳しいカキは店長が「お開けしましょうか?」と気遣ってくれる。食事が美味しいだけじゃなく、心遣いが美味しいこともあるよね。

涅槃の読書模様

 『祈りの海』グレッグ・イーガン読み中。

『ひみつの階段 -1-』紺野キタ(POPULAR コミックス)【→bk1へ】[comic]

 大絶賛!!。しばらくForever Young!では大プッシュしていこうと思います。
 もともと階成社から出版されていた作品をこの度ポプラ社が『ひみつの階段』シリーズのみを再収録して発刊したようです。

 魔法(ファンタジー)をかくした 古い校舎と寄宿舎に
 つかの間の 季節を過ごして 少女たちは 去っていく
 ふりかえれば そこで過ごした日々は 宝石の思い出……
  (帯より)

 伝統ある祥華女学院(主にその寄宿舎)を舞台に、儚くも美しい時間を過ごす少女たちが様々なファンタジーに出会う。一つ間違えば「学校の怪談」というホラーになってしまうものを、絶妙のバランスでファンタジーとして、にこやかに、けれどその時の移ろいが少しだけ胸苦しくなるように描かれています。

 ああ、ホントにいいものに出会った時に限って巧く言葉で表現できない。とにかく多くの人に読まれて欲しいと切に思うばかりです。特に、全ての「女子高生だった」人達に。

『ひみつの階段 -2-』紺野キタ(POPULAR コミックス)【→bk1へ】[comic]

 というわけで↑に続いての紹介です。同じ『ひみつの階段』シリーズの第二集。
 買ったばかりですが何度も読み返していると、凄く細かいところにまで考えが行き届いているなあ、というのを感じます。寄宿舎という空間で、様々な時空が入り乱れるのですが、「あ、こんなところにも」という発見が読み返す度にあります。

 そして、語られる言葉たちがまた素晴らしい。もし付箋をつけながら読んだら付箋だらけになってしまうほど素敵な言葉に溢れています。なにかひとつ引用しようかとも思いましたが、是非実際にこのマンガを手にして読んでいただきたいのでやめました。

 900円と少々値の張るお買い物ですが、決して損はしないと思います。900円分以上の時間、楽しませてくれること請け合い。じっくりと、そして何度も読み返して欲しい作品です。

『幕末幻妖伝』スーパー・エキセントリック・シアター[play]

 会場:グリーンホール相模大野、料金:6000円(S席)
 脚本:大沢直行、演出:三宅裕司
 出演:小倉久寛、宮内大、野添義弘、野崎数馬、大関真、長谷川紀子、三宅裕司、ほか

 SETの記念すべき40回目の公演は、劇団の基本であり本来の魅力である本格アクション・コメディ。

 時は幕末。欧米の列強の猛威の元、明日の日本を担う若者、高杉晋作、伊藤俊作(博文)らは、一足早く開国をすませた清国・上海を目指していた。しかし上陸と同時に白蓮教徒に襲われてしまう。彼らの狙いは勝海舟の命で上海まで彼らが運んできた「殺生石」と呼ばれる謎の石だった。

 とまあ、あらすじはあるのですが、そこはそれSETですから。
 いやもう、とにかく爆笑の連続。三宅裕司小倉久寛のコンビは最高ですね。始めの二人の掛け合いから爆笑の渦。そしてラスト近くの主要メンバーによるギャグ合戦には笑い過ぎで死ぬかと思いました。「もうやめてくれ」とまで思って笑ったのはホントに久し振りです。

 また今回は本場中国から京劇の役者さんを呼んでいて、アクションにも磨きが掛かっています。小倉久寛は47歳にしてバク転2連続。場内からは拍手。人間やればできるもんです。

 東京・大阪と公演を経て、2週間近くの間が開いての一回きりの公演。役者陣の集中力はどうなのか少々不安もあったのですが、逆に2週間の間にそれまでの公演でできなかったことを溜めに溜め、練りに練ってみせてくれたようです。おかげでアドリブ合戦にも緊張感があり、やはりライブは最高だな、という気分。三宅裕司のギャグは夢に見そうだよ。

 とにかくこれだけのエンタテインメントを見せてもらって不満があるはずがありません。SETの公演の中でも久々の大ヒットと呼べる作品に仕上がったのではないでしょうか。

 グリーンホール相模大野は、なにげに大手の劇団や公演を引っ張って来ていて劇場の努力が認められる。こういう頑張りは是非とも続けて欲しい。
 『人間風車』の再演も引っ張ってるのか。うーん、観に行こうかなあ。

Nov.17,2002 (Sun)

daylife

(ログをふっ飛ばしましたが、キャッシュが残っていた方から送っていただき復旧できました。サンクス→くすた)

というわけで本日は鎌倉散策。

鶴岡八幡宮の大鳥居の下で待ち合わせ、参拝。実は年の瀬も近づくこの訪問が初詣だと気が付いた。神様、今年も残り僅かだけどよろしくお願いします。境内では奉納で射矢をやっていた。簡単に当たるものではないようです。
さて、昼食は八幡宮からすぐの一茶庵で三色蕎麦。三色とは通常のもりそばと抹茶、芥子の実のこと。ここで蕎麦を食するのは10何年ぶりだったんですが、記憶にあったのは「蕎麦湯が旨い」ということだけ。そして記憶の通り蕎麦湯は旨かった。

その後は江ノ電で長谷まで移動し、長谷寺へ。皆さんあまり行かれたことがないと思うのですが、長谷観音は一見の価値ありだと思いますよ。残念だったのは昔は観音様は本堂に奉ってあり、板張りの本堂の静けさの中で拝観で来たのですが、今では観光用に即席の観音堂みたいな建物になっていたこと。あれじゃ風情がないよなあ。

続いて長谷の大仏へ。移動中怪しい暖簾を見つける。大仏グミ。食いたくねえ、けど見てみたい。ちなみにそのお店の名前は駄菓子屋。そのまんまな上にバス停の名前も駄菓子屋前。ヒネレよ。
何度来ても大仏は面白味に欠ける。今日もあっという間に素通り。拝観料がもったいなかったかも。ちなみに大仏の胎内の拝観料は20円です。

長谷駅まで戻る際に見かけたパン屋で「鎌倉メロンパン」という名のメロンパンを買う。名前に惹かれたわけではない。お行儀環悪く歩き食い。なかなか美味しかった。食べて損はないと思います。

一旦、鎌倉駅まで戻り、バスに乗り換え、移動。次なる目的地は石釜ガーデンテラス。バス停「浄明寺」で下車してそのまま浄明寺の山道へ。鎌倉駅周辺から少し離れただけなのに恐ろしいほどに静か。それまで紅葉シーズンで混雑していたのが嘘のよう。殆ど無人の境内を通り抜け、しばし山道を登ると洋館が姿を現します。ここが石釜ガーデンテラス。元々はお偉い方の別荘だったものを今は本格的な石釜でパンを焼く工房として、そしてカフェレストランとして使っています。紅葉の状態が中途半端だったのが残念でしたが、それでも景色は綺麗だし、落ちついた雰囲気がよかったです。デザートも美味かった。
浄明寺には茶房もありますし、なにより人がいなくて静かで落ち着けます。鎌倉に来た際は一度足をお運びになることをオススメ。

その後は再びバスで鎌倉駅まで。華二人はお土産を購入(さすがに地元で土産を買う気はしない)。鎌倉を後にしました。

6時半には帰宅していた。近いっていいなあ。

『動機』横山秀夫【→bk1へ】

『ルパンの消息』でサントリーミステリー大賞を受賞しデビュー。第二作の『陰の季節』は第五回松本清張賞を受賞。そして本書の表題作【動機】で推理作家協会賞短編部門に輝いた横山秀夫の作品。
 警察小説好きの私としては今一番注目している作家の一人。
 本書は、表題作【動機】を含めた4編からなる短編集。作者が得意とする警察の裏方を描いているのは表題作のみなので、警察小説が苦手、という方にもオススメしたい一冊。

【動機】
 保管されていた警察手帳30冊が盗まれた。保管制度を提唱し、責任を問われた貝瀬は独自に調査を開始する。外部の犯行か、それとも内部犯か?。
 【逆転の夏】
 女子高生を殺害し10年間の服役を終え出所した山本。自らの過去がバレることを恐れながら葬儀屋で働く彼の元に一本の電話が。名前を名乗らない謎の声の主は山本に「ある人を殺して欲しい」と持ちかけた。
 【ネタ元】
 自分の記事が"新聞戦争"を引き起こす原因となり、弱小新聞の記者として心身疲れ果てた真知子。そんな彼女に突然ライバルの全国紙から引き抜きの声がかかる。思いがけぬことに喜ぶ真知子だったが、ひとつの不安があった。ライバル誌が欲しいのは自分ではなく「ネタ元」の方なのではないか?。
 【密室の人】
 公判中に居眠りをしてしまい、あまつさえ愛妻の名を寝言で発してしまった裁判官・安斎。この失態が思わぬ波紋を呼び、彼を窮地に追い込んで行く。

ブラボーです。確実にオススメの一冊です。

横山秀夫をピッチャーに例えるなら(なぜ?)、遊び球なし三球勝負、ということができると思います。つまり、余計な横道に逸れることなく、一点突破。物語の主軸を離れることなくズンズンと突き進んでくれます。

膨らまそうと思えば膨らませることは可能で、中心となるべきストーリーがしっかりしているだけに横道に逸れたい誘惑もあると思うんですが、それを一切断り余計な贅肉を全て削ぎ落とした肉体(作品)は見事としか言いようがありません。
 昨今、「ただ長いだけ」の物語がチラホラ目立つ中で、この求道的ともいえる精神に感服してしまいます。
贅肉を削ぎ落としたストーリーでも読ませることができるのは、それだけ背骨となる部分がしっかりしている証拠でもあります。だから読者の視線をあえて横道に逸らさせる必要がありません。

 表題作の【動機】を例にとってみても、30冊の警察手帳を盗んだ人物はほぼ始めから「内部犯」と決め付けられて話が進みます。そして、おそらく多くの読者(ミステリを読みなれていれば尚更)が考えるように、主人公の貝瀬も一通りの捜査をした後、ある人物に的を絞ることになります。ここで読者の予想通りの結末になってしまったら「なあんだ」で終わってしまいます。しかし、横山秀夫は、一般的なミスディレクションではなく、読者や主人公の読みの浅さを突いてくるのです。これが素晴らしい。凡百の推理小説ならそれこそ、貝瀬が、そして私がそうだったように当初の「動機」で解決を迎えるところですが、そこから更に一歩踏み込むことで読者を感嘆させる。また、そこで明かされた真実が単純な驚きのためだけに用意されたものではなく、しっかりと物語の根底を貫くものであることに二重の驚きが与えられます。

数少ないセリフとエピソードだけで、これだけの重厚さ(暗いということではない)を与えてくれる作品というのはそうそうお目にかかれるものではありません。そして、登場人物の心の内や葛藤までも見事に描いています。【密室の人】において真実が判明する際のある人物の手紙なぞはその白眉ともいえるでしょう。この手紙のある一文は、私が今年読んだ小説の中で最も素晴らしいとすら思いました。

一般に「地味」と言われがちな横山秀夫ですが、とにかく一度読んでもらいたい。事件の裏には、どんな単純に見える事件や行動の裏にも、人間の思いや苦しみ、葛藤というものが潜んでいる。それをここまでしっかりと描ききっているこの小説を私はオススメせずにはいられません。

Nov.18,2002 (Mon)

daylife

贅沢は言わないが、せめて欲しいと思った本やマンガを財布の中身を気にせず買えるようになりたいものだ(*1)

ぐわっ!!!。浦和レッズが福田正博に戦力外通告。ミスターレッズになんてことを!。チーム側はコーチ就任を要請したらしいが本人は現役続行の意志があり、移籍も、って。福田のいねえレッズなんてレッズじゃねえ。引退なら別だけどもさ。もし福田が移籍したら移籍先チームのサポーターになります。ええ、何と言われようとも。私にとっての福田とはそういう存在。

うっちーもさあ、折角クレスポが立ち止まってくれたのに「日本代表で知ってる選手は?」なんて質問するから機嫌損ねるんだよ。ホントに日本のマスコミって失礼だよなあ。相手がどれだけの選手かわかってないんだろうなあ。

うわあ、大手も次々と「ポイントサービスに警告」してるよ(新文化より)。なんだかなあ。

「物語」は長大化したか?(案)

こんなん↓考えてみました。まだ思いつきにすぎず、実行するかどうかは不明。皆さんのお力添え&反応次第かも。

OHP「物語問題」は多くの方々に様々な思いを抱かせたように思います。またしばたさんご自身が様々な考察を整理されています。ですが、ここで語られる「物語性」とか「薄い」という言葉は抽象的なため、どうしても具体的な論考を重ね難いような気がしました。
 私自身も色々と考えてはみたのですが、どうも風呂敷を広げずに語ることが難しく、これまで日記で考察を述べるようなことはしてきませんでした。

ただ、「物語問題」に直結するかどうかは別として、自分自身が以前から感じていた、「昔に比べ、現在のマンガ(や小説)は長大化する傾向にあるのではないか」、もっと砕けて言えば「長すぎない?」という疑問を考えてみたいと思いつきました。
 こじつけて考えてみれば「薄い」 という概念は定量化し難いが、「長い」という概念は定量化することができる。この調査が少しでも「物語問題」を語る上での具体的な考察の一要因として役立たないかなあ、ってことですね。

で、具体的にどのように調査しようかと思っているかというと、以下のような感じ。

の統計を取ってみよう、ということです。それぞれの年代で巻数にどのような変化があるかを追ってみようと。
 10巻以上から始めたのは、それ以下だと調査する量が多すぎるのではないかという懸念から。本来ならば「10巻未満」という項目が必要だとは思いますけどね。

また、上記の統計対象は。

にしようかと考えています。以上の7誌を選んだ理由は、マンガ界のメインストリームだと思われ、各年代での入れ替わりや個性に変化があり(ような気がする)、連載されたマンガに対して私が記憶している可能性が高いのでやりやすいから。これ以上手を広げるのは大変そうだ、というのもある。
 青年誌もあった方がいいとは思いますが、どの辺りが適当かなあ。「ビックコミック」とかは未だに70年代から連載されたマンガが数を占めているような…。

こうして書いてみましたが、既にこの時点で大変そうな空気が漂いまくり。
 で、調査に正確を期さないと意味もないのですが、上記のような調査を進めていく上で参考になりそうなサイトや統計資料ってどこかにありませんかね。最悪、デジタルじゃなくても「この本のここをみればわかる」でもいいんですが。現時点で考えつくのは単行本の最後についている「既刊情報」を手当たり次第に調べる、くらいなんですが(*2)

そんなわけで、この思いつきに興味を持たれた方は、どんな形であれ情報をいただけると非常にありがたいです。実際に「ジャンプ連載の統計はこれです」とか教えてくださったらもう最高。というよりも反応がなければ多分ポシャります。

小説でもやってみたいけど、段組やフォントの違いがあるので単純にページ数で換算できないからなあ。原稿用紙換算でどれくらい、とか文字数でどれくらい、なんてわかるはずもない。

涅槃の読書模様
『太陽のイヂワル -惣領冬美傑作短編集-』惣領冬美(モーニングKC)[comic]

『3 THREE』『BOY FRIEND』『MARS』などで知られる惣領冬美の短編集。比較的新しい作品が多く、掲載誌も『モーニング』ということで少女マンガ色は薄い。

ふとした経緯で出会った女子高生と一人の男が奇妙に意気投合する表題作。【太陽のイヂワル】
全てに恵まれた幼馴染を描いた、何の取り得もない女性が始めて書いた小説。【ヒトの賞味期限】。
 バリバリのキャリアウーマンと、その部下。そして突如現れた謎の少女との関係は。【奇妙な遺伝子】
 幼い頃に言われた一言で思ったままに絵が描けなくなってしまった女性の半生【虹色のヒラメ】。

惣領冬美のマンガは、出自にコンプレックスをもっていたり、トラウマに囚われていたり、環境や嗜好によって苦しむ、性格破綻者が常に登場する。多くは、容姿に優れ、特定の分野で人並み以上の才能を有する男(当然なにかしら問題を抱えている)に、これまた容姿に優れてはいるが問題を抱えたヒロインが恋をする、というパターンで、二人の性格が(殊更にではないが)破綻しているために互いを傷つけあい、周りまで巻き込んでのラブロマンスになる。これまでは主に少女マンガ誌での連載だったため、それら(性格破綻)は表立って描かれることはなかったが、実際には主人公やヒロイン自身、または彼らの恋愛を語る上で切り離せない部分だ。そのせいもあって惣領冬美のマンガは常に「痛い」という評価を受けてきた。

ただ、個人的には上記した三作やその他の作品を読み続けたきた私にとっては「またこのパターンか」という思いが存在したことも確かだ。だが、もしかすると「またか」と思っていたのは私のような読者だけではなく、作者自身もまたそう思っていのかもしれない。というのも、『MARS』の連載終了後、惣領冬美は、本書に収録された短編を『モーニング』に掲載し、その後、『ES』と作品を連載し始めるのである(現在も連載中)。この『ES』は遺伝子操作によって生まれた異能力者という設定ながら、真っ向から「サイコ」的要素に絡めた作品になっている。連載当初は「惣領冬美がこんな作品を?!」と驚いたものだが、その下地は確かに既にあったのだ。

長い前置きになったが、この短編集はまさしく少女マンガから青年マンガへと活躍の場を移した作者の架け橋といえる作品集だろう。短編とはいえ、一つ一つの物語で語られるのは「何かが狂ってしまった」人間たちのエピソードであり、一見ハートウォーミングに語られてはいるが実際はかなりシュールな話ばかりである。
 そのうちのひとつである【ヒトの賞味期限】の作中で語られる、「それをじっと見ているあなたがおかしいのに」というセリフはそのまま作者である惣領冬美にお返ししたいものである。

惣領冬美が好きなら迷わずオススメ。人の壊れた心を覗いたような作品が好きならそれもまたオススメ。逆に、これを読んで気に入ったら迷わずその他の著作を読むべし。「傑作」であるかどうかはともかく惣領冬美というマンガ家を理解できる一冊であることは間違いない。


*1: 充分贅沢である
*2: サル並みの考え

Nov.19,2002 (Tue)

daylife

17日の日記を上書きして消し去ってしまった…。『動機』横山秀夫のレビューはなんとか復帰できましたが。鎌倉散策が…嗚呼。

『傭兵ピエール』佐藤賢一がマンガ化(画は野口賢)。(最後通牒より)。
 ほー、マンガ化されますか。結構楽しみだなあ。確かにマンガ向きな話かもしれない。単行本になったら買ってみよう <『漫革』買えよ。

うーん半地元民としては中華街は今までどおりであって欲しいなあ。→こんなニュース
 あのゴミゴミした感じが中華街の中華街たる所以だと思うのだが。全世界どこへいってもチャイナタウンの雰囲気は変わらないって言いますしね。フクザツ。

そういや昨日、書泉グランデでレジに並んでいたらハヤカワの青背を5、6冊纏め買いしている初老の男性(白髪混じりで口髭)がいた。あれは多分SF関係者じゃないかなあ。そういう雰囲気が漂っていた。それだけなんですけどね。
 と、思ったら今日は既に書泉の手提げ袋を二つ持った上で8千円も買い物している男性を見た。神保町で買い物する場合はこの程度は当たり前なのだろうか。毎日のように寄ってるとまとめ買いなんてしないから新鮮だった。

ちょっと表記のスタイルを模索中。どうしたら読みやすくなるかしら。

涅槃の読書模様

『ゲーム名は誘拐』東野圭吾読了。レビューは↓。bk1ではいつになったら買えるようになるんだ?。ちなみにAmazonでは一昨日から予約が可能になってました。

購入物。

『ゲームの名は誘拐』東野圭吾【→bk1へ】

私にしては珍しく新刊レビュー。ふと周りを見渡すと「え?!もしかして最速?!」。ある意味責任重大やもしれぬ。
 『レイクサイド』『トキオ』に次ぐ、東野圭吾の最新刊。

佐久間にとって人生とはゲームに他ならなかった。受験も就職も仕事も、そして女も。そして彼はゲームに負けたことはこれまでなかった。全てがうまくいっていたはずだった。しかし、彼にとって初めての敗北が訪れる。自らが企画した日星自動車のキャンペーンが新たに就任した副社長・葛城によってボツにされたのだ。
 憤りを感じた佐久間は、酒に酔った勢いで直談判しようと葛城の屋敷を訪れた。リベンジを誓う佐久間の目に映ったのは、屋敷から抜け出す一人の女の姿だった。女の怪しい行動に興味を持った佐久間は女を尾行する。果たして彼女の正体は?。

東野圭吾『99%の誘拐』(by岡嶋二人)、みたいな。もしこの作品を「岡嶋二人(*1)の新作」(今ではありえないが)と言われて読んだらそのまま信じそうです。というのも「誘拐もの」として非常に巧緻な作品ではあるのですが、最近の東野圭吾の作品には珍しく人間的なテーマや心に潜む悪意といったものがまったくないからです。ここにあるのは、タイトルどおりまさに「ゲーム」。誘拐という犯罪をマス目に繰り広げられる知的なゲーム以外の何者でもないのです。

プレイヤーは二人。人生をゲームとして生き、その戦いに絶対の自信を持つ男、佐久間。そして彼に初めての苦杯をなめさせた男、葛城。この二人の男の生き様というか態度が、犯罪であろうともゲームである、というストーリーの基盤を固めています。
 そして、このゲームにおける一枚のジョーカー。最強のカードでもあり、弱点ともなりうるこのカードの存在がどちらのプレイヤーをどのように左右するのか。最終的な読みどころはその一点になります。

ボリュームが薄く、登場人物も限られているので、スペクタクルには欠けますが「さすがに巧いな」と思わせてくれる一冊。それだけといってしまえばそれだけなんですけどね。「小説」というよりは「読み物」として非常に優れた作品だと思います。面白いことに間違いないし。伏線は少々あざとい気もしますが。

ただまあ、個人的に東野圭吾はマンガ界で喩えるならば浦沢直樹みたいな存在(*2)で、もはや「読み物」レベルじゃ満足できないところもあります。「巧いなあ」とか「面白いなあ」という感想以上のものが欲しいというのは欲張りすぎでしょうか。

最後に「なぜ煙草を吸わないのか」と聞かれた主人公・佐久間の答えを引用。彼の人物像が偲ばれます(*3)

「時間の無駄だと思うからさ、一本吸うのに約三分かかるとして、一日に一箱吸う人間は二十四時間のうちの一時間をただ煙を吐くことに費やしている計算になる。煙草を吸いながら仕事をしているなんていう者がいるが、そんなのは屁理屈だ。それともう一つ、煙草を吸うためには一方の手を犠牲にしなきゃならない。どんな仕事だって、両手でやるより片手の方が効率がいいなんてことはありえない。」

*1: 著作をそんなに読んでいるわけではありませんが
*2: 宮部みゆきは井上雄彦ですかね。書けばベストセラー
*3: もう一つの掃除についての考え方にも脱帽した

Nov.20,2002 (Wed)

daylife

 ADSL12M用のモデムが届いた。回線工事は来週の予定。だが、しかしWindows95は動作保証対象外かよ。不安だ。

 今日は友人の結婚式前の最後の打ち合わせ。式場の上階にあるレストラン・バーでお茶を頼んだらコーヒー、紅茶が1000円。コーラが800円。これが表参道価格か。ビールの方がコーヒーより安いってどゆこと?。おまけに10%のサービス料金まで取られる。都会は恐ろしいところじゃあ。

「物語」は長大化したか?(案2)

 OHP19日の日記で取り上げられている。反応があって嬉しいっス。というわけで調査してみようと腹を括る。あとはやり方。

 しばたさんの案だとご指摘通り、雑誌の現物を手に入れるのが大変だし、どうやら少なくとも1974年当時は「第xx話」という記載がないようなので無理っぽい。しかし、私の案も作業が大変な割に分析の上でアバウトな結果しか出せないような気がしてきた。やはり10年一括りではなく、年代毎に調査する方がベストだろう。

 うーむ、もう少し考えてからの方がいいような気もするが、熱が冷めないうちに手を付けてしまった方がよさそうだ。データベースで利用できるものを探すことと、自分の在庫をひっくり返して各年代の単行本を探してみることにする。いきなり複数の雑誌に手を付けるのは無理っぽいので、しばたさんのご提案通り「少年ジャンプ」と「少年マガジン」のどちらか資料が手に入りやすい方から手を付けてみたいと思う。

 そんなわけなので引き続き情報募集。こんなデータベースがあります、とか、こういうやり方はどうでしょう、といったご意見をお待ちしています。勿論、直接的なご協力があれば感謝感激です。

蹴球微熱 日本VSアルゼンチン

 埼玉の芝はまた悪くなっちゃったみたいですなあ。
 ワールドカップでは、ベルギー、ロシア、チュニジア、そしてトルコと戦いましたが、A級のチームと戦うことはありませんでした。その意味では今回のアルゼンチンは超A級といってもいいチームであるだけに日本の真価が問われる試合といっても過言ではないでしょう。

 ところでテレ朝は「中村、中村」を連呼するんですけど、正直今回もいいところはあまりなかったと個人的には思います。得意とするはずのフリーキックの精度があまりにも低かったし、とてもじゃないけど「中村を中心に」攻撃の形が作られていたとは思えませんでしたね。一番腹が立ったのは自らが蹴ったフリーキックをDFに跳ね返され、そのボールが自分の方に飛んできたにもかかわらず追いかけなかったシーン。アルゼンチンの選手は追っていたのに。ああいう緩慢プレーを見る限り、トゥルシエの判断は正しかったと思ってしまう(*1)

 '98年組がよかったですね。特に両サイド。名良橋はスピードも素晴らしいけど「ここで前へ」という判断の思いっきりが見事。オーバーラップが美しいよ。あとはセンタリングの精度でしょう。中西は攻撃参加こそ少なかったもののハードなDFしてました。ホームじゃなかったらカード貰ってもおかしくない。しかしやはりアルゼンチン相手にはあれくらいやらないと。「アルゼンチンには借りがある」とインタビューで答えていたように人一倍思うところがあったんでしょう。やられまくったオルテガには同情してしまいました。

 小笠原中村よりなんぼもいい仕事してましたよ。あれを続ければ黄金の中盤の一角を崩すことも可能なんじゃないかな。でもそれ以上に中田浩二福西のダブルボランチはいいと思うなあ。体で負けないし、ベロンとやりあう姿なんかは頼もしかった。後半スタミナが落ちてしまったのが残念でしたけど。もっと攻撃参加してくれればこの二人でボランチはいいと思いますけどね。格上の相手には。同格、もしくは格下の時は稲本を入れて攻撃的にする、と。ちなみに左サイドは中村ではなく当然小野です。

 アルゼンチンは後半の姿が真の姿。前半は手を抜いていたわけじゃないでしょうが、本気の本気出せば日本がまだまだ敵う相手ではないということですね。ただ、そこで悲観的になる必要はない。'98年を思い出せば、引いて守ることしかできなかった相手に、堂々とサッカーの試合ができたんですから。負けて残念とか、点が獲れない、とか否定的な意見も出るとは思いますが、4年前をよく知る人間であれば「アルゼンチンとまともにサッカーしてるよ」というだけで感慨深いのではないでしょうか。日本代表の進化が早すぎて皆、忘れてるだけですよ。そう考えれば超A級相手でもサッカーができる、ということがわかっただけで4年後の2006年が楽しみじゃありませんか。

 しかしベロンは凄いな。ソリンのシュートも。クレスポは強いな。オルテガはドリブルばかりに目が行ってたけどラストパスが上手すぎる。どうしてあれだけ攻めて3人のDFで守れるのか不思議でしょうがない。これでベストメンバーじゃないんですからね。参りました。

 でもそれ以上に2006年が楽しみなのは韓国でしょうね。ブラジル相手に2-3。敗北したとはいえ2点獲ったのか。ソル・ギヒョンはベルギーリーグの得点王だって。

涅槃の読書模様

 『しゃべくり探偵』黒崎緑【→bk1へ】読了。レビューは後日。

 『「超」文章法』野口悠紀雄【→bk1へ】読み中。


*1: あくまでも中村に関しては

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